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5階病棟12月レクリエーション |
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2017年最後の5階病棟レクリエーションは、クリスマス会を開催しました。
今回も準備の段階からレクリエーションの一環として、患者様と一緒に作っていきました。
準備レクリエーションでは、クリスマス会場の演出には欠かせない「輪飾り」と、5階病棟では恒例になってきたA0サイズの大型パネルの塗り絵を制作し、
今回も毎回大好評を得ている顔出しパネルにしました。
塗り絵レクリエーション1)には、着物販売を自営でされ広告も自分で図案を考えていた方が参加されていて、「文字を書くときは、こうするといいのよ」と、
パレットを定規代わりにうまく使ってレタリングの知識を共有できたり、広範囲を塗るときは、「二本使いで塗った方が早いね」など、創意工夫をしながら完成することができました。
輪飾りレクリエーションでは、「どうしたらエエんか、わからへん」と、身の置き場所が定まらない様子の認知症の方が、輪飾りレクリエーションに関わってもらったことで、
「こんなことやったら、なんぼでも言うてくれたらするから!手伝えることあったら、なんでも言ってなぁ」と、30分ほどの作業後には、笑顔と自信が表情にありました。
日付が変わっても、「役に立ちたい」という気持ちは忘れずで、「できることがあったら言うてなぁ。頼むでぇ!」と何度も言葉にされていました。
高齢になってくると加齢に因る身体機能低下や疾患によって、社会的役割の喪失を経験し「生きがい」を失ってしまっていることがあります。
「生きがい2)」は、役割や達成感などで得られると言われており、新しい役割や達成感を得ることが高齢者のQOL(生活の質)を高めていくのに大切です。
そのためのツールが、病棟におけるレクリエーションなのです。
当日は、20人ほどの参加者がありました。
最近は病棟レクリエーションに、お子様やお孫様、ご夫婦で参加してくださることもあり、患者様や家族様の普段と違った一面をお互いに見てもらえる機会となり、
共通体験が良いコミュニケーションツールとなっています。
プログラムは、クリスマスと日本の関わりエピソードクイズから。
クリスマス会は、450年以上前の1552年の戦国時代からあった3)って知っていましたか?教科書でも習ったフランシスコ・ザビエルが関係していて、
発祥は山口県山口市だそうで12月はクリスマス市になるそうです。
クリスマスケーキの写真は復刻版ですが、100年以上前の1910年(明治43)に不二家が初めて売った4)って知っていましたか?など、雑学をクイズで知ってもらいました。
今回始めて音楽レクリエーションを取り入れました。ミュージックベルや鈴を使って演奏しながら「きよしこの夜」と「赤鼻のトナカイ」のクリスマスソングを皆で歌いました。
専門的にはアメリカ発祥の音楽療法5)6)といわれる分野で、音楽をキッカケにコミュニケーション・生活の質の向上やリラックス効果・ストレス軽減、脳の活性化等を目的としています。
今回、離床を嫌がって渋々だった方が、一番集中して楽しんで参加されていたのが印象的でした。
音楽には力がありますね。
後半は工作レクリエーションで、松ぼっくりをツリーに見立てて、自由にデコレーションしてもらい、オリジナルのミニクリスマスツリーを作ってもらいました。
これは大好評で、個性豊かなミニクリスマスツリーが完成し参加者へのクリスマスプレゼントとなりました。
看護師も「子供に持って帰りたい」と言って、作って持って帰っていました。
最後は、顔出しパネルで記念撮影&写真プレゼント。
みなさん「ええ記念になりました」と言って、床頭台に飾っていたり、家族との話題提供になっていたりします。
また、写真は後に残ります。
入院が高齢者の認知機能低下のリスク7)になっている中で、記憶は「思い出す/回想する」作業が大事で、退院後においても写真をキッカケにして思い出すこと、
他者と会話の話題にしてコミュニケーションを図ることで自然に記憶力や集中力を使い、脳の活性化に繋がることが期待されます。
IHI播磨病院のある兵庫県相生市の高齢化率は34.41%8)(2017年11月末現在)半年ほどで0.2%増加しており、今後も20年以上にわたって高齢化率上昇が推計されています。
IHI播磨病院を利用される患者様も、高齢者(65歳以上)の方がほとんどです。
まだ研究は少ないですが高齢者の入院が認知機能低下7)など入院関連機能障害のリスク9)があることがわかっています。
また認知症施策10)11)や2025年に向けて地域包括ケアシステム12)の実現へ向けて病院は、病気と共存しながらQOL(生活の質)の維持や向上を目指して、
住み慣れた地域や自宅での生活のための医療、地域全体で支える為に「病気と闘う場」から「生活を重視した場」としての体制が求められています。
患者様本人の価値観を尊重する関わりを大切にし、通常業務でも勿論ですがレクリエーションを通しても、生活の資源としてコミュニケーション機会やICF(国際生活機能分類)13)に
おける「活動」「参加」の維持・拡大につながる「生きがい」づくり、「入院が生活を分断しない」病棟づくりを出来ることから実践していきたいと思います。
参考文献
1)日本ブレインヘルス協会(2007)「脳を活性化するぬり絵 認知症に対する改善効果も期待」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000000340.html(参照2017/12/24)
2)野村千文(2005)「「高齢者の生きかい」の概念分析」,『日本看護科学会誌』25(3),pp61-66,日本看護科学学会.
3)”クリスマス市山口“
http://www.xmas-city.jp/(参照2017/12/23)
4)”不二家の歴史(明治から終戦)”
https://www.fujiya-peko.co.jp/company/company/history.html(参照2017/12/23)
5)”日本音楽療法学会”
http://www.jmta.jp/(参照2017/12/23)
6)“American Music Therapy Association”
https://www.musictherapy.org/(参照2017/12/23)
7) R. S. Wilson(2012)“Cognitive decline after hospitalization in a community population of older persons.”
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22442434(参照2017/08/04)
8)相生市,“相生市介護保険の状況”
http://www.city.aioi.lg.jp/soshiki/chouju/kaigohokennozyoukyou.html(参照2017/12/23)
9)田邊翔太,矢野彰三(2017)『入院関連機能障害(Hospitalization-Associated Disability:HAD)の現状と危険因子の検討』,日本農村医学会雑誌 65(5), pp924-931.
10)厚生労働省,「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)〜認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて〜の概要」
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12304500-Roukenkyoku-Ninchishougyakutaiboushitaisakusuishinshitsu/01_1.pdf(参照2017/12/24)
11)厚生労働省,“認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)”
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000064084.html(参照2017/12/24)
12)厚生労働省,”地域包括ケアシステム”
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/(参照2017/12/23)
13)大川弥生, ICF(国際生活機能分類)−「生きることの全体像」についての「共通言語」−, 第 1 回社会保障審議会統計分科会 生活機能分類専門委員会 参考資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002ksqi-att/2r9852000002kswh.pdf(参照2017/12/24)
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